投資家心理

2010年2月16日 (火)

ソブリン債の投資リスク

ギリシャの財政不安問題がポルトガルやスペインなどの南欧諸国に波及し、ヨーロッパ全体の信用不安問題として意識されています。これを受けて、ユーロは対ドルでも、対円でも大幅に下落しています。その結果、特に南欧諸国を中心に、ソブリン債への投資リスクについてもかなり神経質な展開になっている様に思います。

ここで、ソブリン債とは、各国の政府や政府機関が発行したり、保証したりしている債券のことです。ただ、そうは言っても、信用格付けの低い国の国債などは安全性が高いとは言えません。しかし、一般的にソブリン債と言えば、格付けの高い国の国債などを指すことが多く、安全性の高い債券とのイメージです。そして、このソブリン債で運用している投資信託が、特に高齢者の間で人気を博しています。その人気の理由は、①信用力の高い国の国債に分散投資しており、運用が安定している。そして、やはり何と言っても、②毎月分配がある、ことではないでしょうか。

しかし、上述の様に、現在は特に南欧諸国を中心に、ソブリン債への投資リスクを意識しなければならない局面になっています。それは勿論、一つには価格下落=金利上昇のリスクです。そして、もう一つ忘れてはならないのが、ソブリン債で運用している投資信託では通常、為替リスクのヘッジを行っていない事です。ですから、為替変動の影響を大きく受けます。しかも、実際には、前者よりも後者のリスクの方がずっと大きいのです。従って、為替リスクを常に意識していなければならない以上、ソブリン債で運用している投資信託と言えども、決して安心とは言えない。今はまさに、その事が顕在化している局面だと思います。

冒頭に指摘したギリシャの財政不安の問題。そして、それをきっかけに拡がったポルトガルやスペインなどを含む南欧諸国の財政不安。この問題が欧州全体に波及する金融危機問題として市場で意識されてきたことを受け、欧州連合(EU)は11日に開催した臨時首脳会議で「ユーロ圏の安定を守るため必要ならば断固とした協調行動を取る」という声明を発表しました。しかし、市場では単なるリップサービスとしか受け止められなかった模様です。結局、ユーロはいったんドルに対して買い戻されたものの、再び売られる展開となっています。何れにしても、ソブリン債で運用している投資信託と言えども、決して安全・安心ではないのです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年12月14日 (月)

真珠湾の謎

私のコンサルタント仲間がNHKスペシャル;「真珠湾の謎」を見た感想として、次の様なメールを送ってきてくれました。私は見なかったのですが・・・

(メール引用開始)

先日のNHKスペシャル;「真珠湾の謎」は凄かった。特殊潜行艇(2人乗りの小型潜水艦,魚雷2搭載)×5隻で出撃したが、戦果はゼロ(9人戦死,1名捕虜)だったのに 日本側は 戦艦アリゾナ撃沈を特殊潜行艇の戦果として でっちあげ、しかも戦死した9名を「九軍神」と称して 国威発揚の宣伝に利用。一方、アメリカ側は 捕獲した1隻を詳細に分解・調査して、再度組み立てて アメリカ国中を 軍事国債発行の為のキャンペーンで行脚して回った。僕は個人的には 捕虜になった1(酒巻艇長)が、その後どうなったのかが気になる。「九軍神」は靖国神社脇の例の博物館にもパネルで展示してあった。

(メール引用終わり)

このメールを読んで、私は先日書いた記事「官房機密費とは?」のことを思い出しました。やはり為政者と言うのは、何時の世でも表と裏、本音と建前をうまく使い分ける。今回の仲間からのメールを通して、あらためてそう思いました。そして、それがまたマネーの流れを左右する。やはり資産運用というのは単に物事の表面的な部分だけを見ていたのではダメで、いかに奥を読んでいくか。それが死命を制するビジネスだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (1)
|

2009年10月24日 (土)

元本保証の視点

今回は前回記事で引用した森永卓郎氏の記事「デフレは長期化する」の中から、前回引用しなかった箇所を取り上げてみたいと思います。

(引用開始)

中央銀行が自由にコントロールできる資金量(現金+中央銀行の当座預金)をマネタリーベースと呼びますが、8月の対前年比伸び率をみると、日本の+6%に対して、EUは+30%、アメリカは+102%です。日銀も資金供給を増やしてはいるのですが、世界との比較でみると、強い金融引き締めになっているのです。藤井財務相はその状態を続けると言っているわけですから、相対的に供給の少ない円の値段が上がる、すなわち円高になるのは当たり前のことなのです。円高が進むとデフレになります。現に、8月の全国消費者物価指数(生鮮食料品を除く)は、マイナス2.4%と、過去最大の下落となっています。

こうした事態を受けて、藤井財務大臣の発言を「失言」だと非難する声も上がっていますが、そうではありません。財政健全化と金融引き締めは、藤井大臣の持論であり、同時に民主党の基本戦略なのです。民主党の経済政策は、生活者の視線から作られています。物価が下がるデフレは、消費者にとってうれしいことです。同時に円高も安い費用で海外旅行に行けたり、輸入品の価格が下がったりするので、悪いことではないのです。また金融引き締めがもたらす金利高も、「バブル崩壊後の低金利政策が、家計から利子所得を奪った」と批判し続けてきた民主党にとっては、むしろ望ましいことなのです。

そうして考えると、今後の民主党政権下では、デフレ基調が続くと考えた方がよさそうです。そのとき一番問題になるのが資産運用です。デフレのときには、いかに元本を守るかということが重要になってきます。

変化はすでに現れています。第一生命保険が元本保証の変額年金保険の販売を休止する方針であることが930日に明らかになりました。これまでにも、住友生命保険、三井生命保険など、大手の生命保険会社が、相次いで元本保証の変額年金保険の新規販売を停止しています。元本保証の変額生命保険は、株価が大きく下落すると、その損失を生命保険会社が穴埋めしなければならないので、デフレが続くと、生命保険会社の負担が大きくなりすぎてしまうのです。

ただ、逆に消費者の立場から考えると、いま運用先として最優先で考える必要があるのは、元本保証だということになるでしょう。

(引用終わり)

少し長い引用になってしまいましたが、ポイントは2つ有ると思います。まず一つは、企業重視ではなく、生活者重視が民主党の基本戦略であると言うこと。この点については、私も総選挙当日の830日に書いたブログ記事「マニピュレーション」の中で、民主党が勝つことを前提に同様の趣旨のことを書いています。

それと、もう一つはFP(ファイナンシャル・プランナー)的視点から、「今後の資産運用の基本方針は元本保証にある」と言うことが書かれていますが、この考え方についても私も基本的に同感です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年10月18日 (日)

大学は証券投資のプロか?

皆さんは「ミセス・ワタナベ」さんって、ご存じですか?。「ミセス・ワタナベ」さんとは主婦層をイメージした日本のFX(外国為替証拠金取引)に参加する個人投資家を指す総称です。この「ミセス・ワタナベ」さんが為替市場の一大勢力として台頭し、アメリカでも紹介されました。その「ミセス・ワタナベ」さん、昨年秋のリーマン・ショック以降に急減し、その一方で昨年12月から全国のパチンコ台の数が増えている模様であることから、「ミセス・ワタナベさんは、パチンコ店に移動したのではないか」と推測しているコラム記事を読んだことがあります。

そして、今週の週刊ダイヤモンドは為替の特集号で、為替リスクの有る金融商品やFX取引などで、大損する素人投資家が後を絶たないという話が出ています。しかも、その「素人」の中には、公益法人や学校法人、国立大学なども含まれているのだそうです。そう言えば、今年3月期決算では、有名私立大学の巨額の運用損が話題になりましたが、大学と言えば、学生に対して経済学や金融論や証券投資論や資産運用論などを講義し、自らも研究しているはずの学びの場であり、また研究機関でもあるはずです。にも拘わらず、まさに証券投資のプロとも言えるはずの大学で、何故こんな事になってしまったのでしょうか?

ただ、この事に関しては、私は先日書いた兄弟ブログの記事「予測の確度」の中で、「経済学ないしは経済理論と、予測力との相関はかなり低い。寧ろ経営コンサルタントが日常的に行っている常識的な考えの方がずっと予測確度が高い。これが昨年秋の金融危機が齎した教訓の一つだったと、私はそう考えています」と記していますが、まさにこの通りだと思います。にも拘わらず、日本では欧米の先進国に比べて、所謂お金の専門家への認知度がかなり低い。その理由は、単にお金の専門家へのニーズが低いからだけではなく、日本では大学さえもが、本当はお金のことにあまり詳しくない。実は素人と大して変わらないレベルだったりするからではないかと思うのです。

そして、そうした素人を相手にした金融商品の販売で、売り手である銀行や証券会社はしっかりと儲けており、それが批判されたりもするわけですが、彼らは決して法を犯しているわけではありません。ですから、買う側が「自分は素人で、お金や投資のことはよく分からない」と思ったら、そう言ってハッキリと断れば良いのです。そうすれば、彼らも暴力団ではありませんから、それ以上は突っ込んできません。そうやってハッキリ断らないと、今度は損しても、それは単純に買い手が素人なのであり、知識が無いのに儲け話にまんまと引っ掛かったというだけの話。それで片付けられてしまいます。ですから、皆さん、断る際には、しっかりと断りましょう。

しかしながら、こと大学を初めとする教育機関の運用損に関しては、私はそんな単純な損失話では済まされないと思っています。何故ならば、一つには長い目で見れば、非常に大切な人材育成のための資金を失った出来事でもあり、そして今の大学には経済学や証券投資論を論ずる能力が実は欠如しているのではないか?。それを披瀝したのが、奇しくも今回の運用損の計上の意味ではないかと、私はそう考えるからです。ですから、これは単純に「金融商品について無知でした」では済まされない話だと思っています。

ただ、今の日本には、巨額の資金を保有する大組織の幹部でさえもが、そうした金融の儲け話に安易に乗ってしまう事がしばしばあり、それで失敗している話を実によく聞きます。つまり、日本はそれ程までに金融音痴の国なのであり、これでは外資系金融機関にとっては、まさに上得意の“カモ”です。

結局のところ、何も知らないのに、その金融商品を買ってしまった大学や公益法人などが、まさに金融の「き」の字も知らなかったということであり、日本におけるお金の専門家が育っていない現状が、こんなところからも透けて見えてくる様に思います。

そして、売る側(銀行や証券会社)は、売ることが商売であり、客を儲けさせることが仕事ではありません。特にノルマに追われた営業マンは、良い話だけを強調して、損する可能性(リスク)については十分な説明をしないのが一般的です。ならば、既述の様にハッキリと断るのも良いですし、あるいは、そのリスクをマネージし、軽減する為にも、本当のプロの専門家や専門のコンサルタントに相談するのも一法だと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年8月28日 (金)

株価形成の光と影

先月の話になりますが、78日、金融庁はペイントハウス(現ティエムシー)とゼンテック・テクノロジー・ジャパンが作成した財務諸表について、金融商品取引法に基づく監査証明を行った監査法人ウィングパートナーズに対し、2009715日から814日までの業務停止1ヶ月及び業務改善命令の処分を下しました。さらに代表者の赤坂氏ら所属会計士3人も最長16カ月の業務停止となる過去にあまり例を見ない重い処分を下しました。

同監査法人は設立からわずか2年余りで20社以上もの上場クライアントを獲得したそうです。まさに急成長の新興監査法人です。そして、今回の処分はペイントハウス(現ティエムシー)とゼンテック・テクノロジー・ジャパンを巡って、ずさんな監査が行われていたことに対するものでした。ジャスダックに上場していた住宅塗装会社のペイントハウス(現在は上場廃止)は20058月期に社債の債務免除益117億円を計上。しかし、実際に社債権者との間で和解が成立したのは、期末を過ぎてからのことで、本来は翌期に計上すべきものでした。同社は大幅な債務超過に陥っており、会計ルールを逸脱した前倒し計上を行わなければ、上場廃止となる瀬戸際にありました。そして、今回処分を受けた会計士はそれを追認したのだそうです。また、大証ヘラクレスに上場するソフト開発会社のゼンテックは20083月期以降、実体のない事業譲渡に基づく「のれん」や架空売上げの計上などを繰り返していたにも拘わらず、今回処分を受けた会計士は会社側の説明を鵜呑みにして契約書の内容に関する確認手続きなどを怠っていたのだそうです。

ただ、ゼンテックの場合には増収増益を保つ一方、営業キャッシュフローは大幅なマイナスが続くという歪な決算を公表しており、それは結局“粉飾”だったわけですが、そうした歪さに疑問を抱かなかった投資家がいたとすれば、私はそうした投資家にも問題が有ったと思います。この様に、株式市場では個社毎に実に様々な思惑や事情が複雑に錯綜し、絡み合い、そして各社の株価が形成されているのです。そこには表もあれば、裏もある。光もあれば、影もある。決して綺麗事だけでは終わってはいない。こうした事例として、今回の事件を取り上げてみました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年8月 2日 (日)

「短期」か「長期」か

前回のブログ記事では、個人投資家の投資行動について考えてきましたが、今回はまず最初に機関投資家や外人投資家の投資行動から少し見ていきたいと思います。

国内の機関投資家は、パッシブ運用(ベンチマークとの連動を目指す運用)を別にすると、個人投資家とは対照的にファンダメンタルズ分析を中心とした運用を行いますしかし、スポンサーである年金基金などは四半期毎での運用成果の報告を求めてきますから、どうしても短期的な時間軸でのファンダメンタルズ・アプローチになってしまっているのです。また、外国人投資家も一部にロングオンリーと呼ばれる長期志向の投資家も存在しますが、現在はロング・ショート戦略など短期志向のヘッジファンドが中心となっています。

そうすると、個人投資家だけでなく、国内機関投資家や外国人投資家までもが短期志向ということで、現在の株式市場は短期志向の投資家が主体となったバランスの悪い状況となっていると言えるかもしれません前回のブログ記事からの流れで言えば、「企業」よりも「株価」。つまり、株価を重視している投資家が多く、本質的な企業価値の向上に対する関心は軽視されている傾向にある様に思います。

ところが、今まで数多くの経営者の方々とお会いし、そしてディスカッションしてきた私の経験から言えば、企業規模の大小に拘わらず、優秀な経営者は四半期決算毎にコミットし短期的な株価の変動を意識しながらも、中長期的な企業価値の向上に日々取組んでいます。その為には、長期的なプランが必要なことは明らかですそして、そうした意識の齟齬が株主と経営者との間に溝を生んでいる面もあると感じています。

ただ、投資家側から言えば、企業の長期的な価値向上を見分けるには、その企業の本質的な競争力の源泉を見極める視点が重要であり、その為にはバランスシートなどの財務情報からだけでは得られない、企業の本質的な部分を理解しなければなりません。例えば、その企業の経営者の資質、企業文化など、長期的な視点に立って企業を分析しなければならないのです。それを一社づつやっていくのは気が遠くなる様な、骨の折れる作業です。時間もかかります。しかし、私はそこから逃げてはいけないと思います。短期志向では寿命も短期。株式市場で長く生きていく為には、長期的な視点で企業を分析する眼力も養わなければならない。それが必要不可欠だと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年7月30日 (木)

「企業」か「株価」か

現在、株式の投資主体別売買動向を見ると、東京・大阪・名古屋の3大市場における個人の売買シェアが3割を占めるなど個人投資家の動きが注目されています。しかも、こうした個人投資家の売買代金における90%近くがネット証券を通じた売買になっているようです。この背景には、株式売買委託手数料の自由化があります。日本では、199910月が株式売買委託手数料自由化のスタートと言われていますが、ネット証券などの台頭もあり、米国が25年かけて手数料の自由化を進めてきたレベルを、日本ではごく短期間に実現してしまいましたただ、手数料が自由化されて安くなった半面、投資判断に必要な情報は個人投資家が自ら集めなければなりせん。しかし、その点についても、現在ではネット証券からの情報をはじめとして、株式関係の情報ソースの広がりもあって、個人投資家でも機関投資家並みに情報収集できる環境が整備されてきています。

しかし、その一方で、大手証券の営業マンや中小証券の外務員の人たちによる株式営業のウエイトが著しく低下しています。現在、日本では証券会社による個人向けの株式営業は衰退の一途だと言って良いと思います。最早、対面営業による株式売買委託手数料を柱としたビジネスモデルは成り立たなくなってきているのです。

そして、今や自らが積極的に情報収集する個人投資家たちは、言わばセミプロに近い存在とも言えます。しかし、その彼らも、その実態はと言えば、大半は飽くまでも短期売買志向。ですから、その彼らにとっての重要な情報は、チャートなどのテクニカルなデータや決算情報を含むニュースフロー、そして投資家の板情報などです。そして、これらの情報に耳をすまし、敏感に反応しますこうした投資行動は、まさに「企業」ではなくて「株価」に惚れて投資していると言えるが如き行動です。

実際、その企業の業績をはじめとする実質的な企業価値が、1日の中で5%、1週間の中でも10%と、そんなに大きく変化しているとは考え難いことです。つまり、企業の本質的な価値がわずかな時間や日数で大きくぶれることは本来あり得ないはずなのです。にも拘わらず、それ位の時間軸と変動幅で株価は大きく振れている。そうすると、投資対象は「企業」か「株価」か。この問題についても、株式市場に係わる者として、今後ともよく考えていかなければならない問題だと思っています。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年7月26日 (日)

日経平均株価10,000円の投資家心理

24日の日経平均株価の終値は、前日比151.61円高の9944.55円。再び10,000円に近づいてきました。日経平均株価10,000円。そこには、どの様な投資家心理が働いているのでしょうか?。今回の記事では、こうした点について少し考えてみたいと思います。

通常、株価が上昇し、やり手の投資家が株で儲けた話などアチコチで出始めたりすると、人々は他人の成功を羨み、株価の上昇は更なる株価上昇の予兆ではないかと考え始めるものです。その結果、多くの人が市場に参加したい誘惑に駆られ、株価の上昇が更なる株価上昇を呼び、しばらくの間はこのサイクルが続きます。そして、その時に、多くの人は投資しないで後悔する可能性と、投資して痛手を被る可能性を天秤にかけるのではないでしょうか。しかし、「では、正しい投資判断は何か?」という問いを発しても、専門家の間に一致した見解はありません。そのために結局、投資しなかった事で後悔することと、投資して失敗した時の恐怖という2つの気持ちを両天秤にかけて判断せざるを得ない。そして、積極的に投資する方向に判断が偏りがちになっているのが、日経平均株価10,000円の投資家心理なのかもしれません。

しかし、今後とも積極的に投資する心理が続くかどうかは十分に考える必要があります。このブログを通読して頂いている読者の皆様には既にお分かりの様に、今の株価上昇を積極的に支持しているファンダメンタルズ面での好材料など実はあまり有りません。多分に政治的な臭いのする相場であり、従って私は今の株価上昇を「官製相場」と称しています。にも拘わらず、人には株価上昇に感化されがちな傾向があり、こうした性向がブームやバブルを生み出す一因になるのかもしれません。

私が思いますに、やはり株価上昇にはそれを積極的に支持するシナリオやストーリーが必要で、そのシナリオが投資家のやる気を引き出し、元気にさせてくれます。けれども、現在のように、苦労話が世間に満ちあふれる中で、そうしたストーリーを新たに生み出すのはなかなか難しい。実際、今年3月以降の株式市場の回復に、人々をやる気にさせるようなシナリオやストーリーなど無かった様に思います。にも拘わらず、株価は上昇しました。何故か?。強いて言えば、単に過度に深刻なバッド・ニュースが出なかっただけの様に思います

今回の金融危機を契機として、既に規制緩和や自由市場主義を賞賛するシナリオは失墜し、それと同様に資本主義を信奉する思想も信頼を失いました。説得力のある回復シナリオが見い出せない。ならば、ここで焦ってはいけないと思います。いま本当に必要なのは世界経済を目下の危機的状況から抜け出させることであって、株価の本格上昇はそれからでも遅くはありません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年7月16日 (木)

生涯現役

生涯現役。目下の厳しい経済環境は、これから退職年齢を迎える人たちに、こんなメッセージを発しているように思います。実際、定年退職後の人生を働くことなく悠々自適に過ごすというのは最早、現実的な選択肢ではないのかもしれません。

日本人は長生きする国民です。厚生労働省の第20回生命表によると、男の平均寿命は78.56年、女の平均寿命は85.52年となっています。また、国民の健康状態も向上し、健康的に過ごすライフスタイルと医療の進歩の相乗効果で、障害を持つ高齢者の割合も低下しています。それに、高齢者にとって働きやすい職場環境も徐々に整備されつつあります。

しかし一方で、現在の年金制度は老後生活への不安を増大させています。先日には昨年の公的年金の運用損が9.6兆円だったことが発表されました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が発表した2008年度の運用利回りはマイナス10.03%。これによって2兆円近い累積損失に転落したことが明らかになりました。現在、厚生労働省が用いている公的年金の予定利回りは4.1%。つまり、この水準を達成しないと年金財政はさらに今年度も悪化することになります。少子高齢時代を迎えて、これは本当に厳しい現実でもあります。

企業側では401kのような確定拠出年金制度を積極的に導入していますが、401kは老後の安定収入源を約束するものではありません。さらには、健康保険制度が破綻寸前なのは周知の事実で、家計に負担がのしかかっています。

その意味で、株式投資は有力な選択肢になると思います。それは単に経済的メリットだけではありません。頭を使うことで、心身に活力を与えてくれますし、認知症の予防にもなると思います。投資クラブを作って、仲間の誕生日を祝ったり、コーヒーを飲みながら気軽にお喋りしたりできる社会交流の場とするのも良いアイディアだと思います。

要は、多くの日本人にとって老後も働き続けなければならないことが今後の現実となることを、現在の不景気は明確に示していると思います。ならば、こうした状況を逆手にとって、災いを福に転じることが、私たち一人ひとりにとっての課題になっていると思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2009年4月22日 (水)

投資家の目はそう簡単に誤魔化せない

米大手銀バンク・オブ・アメリカが420日発表した1―3月期決算は純利益が424700万ドル(約4200億円)と前年同期の3.5倍に拡大した。年初に米証券大手メリルリンチを買収した増収効果が出て、市場予想を上回った。ただ、米景気の悪化を受けて融資の焦げ付きを引き当てる貸倒引当金が急増し、資産内容の質が低下した。

事業会社の粗利益に該当する純営業収益は2.1倍に拡大した。住宅ローン最大手カントリーワイド・ファイナンシャルを買収した効果で住宅ローンの残高が拡大、金利収入が増えた。米政府の金融緩和策や株式相場反発を受け、メリルリンチが得意とする市場取引部門が好調だった。市場取引部門の損失処理額も昨年10―12月期に比べて減少した。

ただ、貸倒引当金は133億ドルと2.2倍に拡大。住宅、商業不動産、ローンなどの幅広い融資債権の延滞比率が上昇した。不良債権が融資全体に占める割合は2.65%と1.75ポイント上昇した。

(以上、日経ネットより)

バンカメが20日早朝に発表した1―3月期決算は、純利益が前年同期の3.5の好決算。しかも、市場予想を上回っていたにも拘わらず、決算発表後の米国株式市場でバンカメ株の終値は前週末比で何と 24もの急落となりました。

実は私もこの好決算を見た時に、あまりいい感じを持ちませんでした。何故ならば、この決算は米FASBが導入決定した時価会計緩和策を受けた決算だったからです。つまり、今回の決算数字はお化粧後の数字であり、実態的な悪さを反映したものではないとすれば、投資家が上べの決算数字の良さよりも、貸倒引当金が前年同期から2.2倍に拡大したことの方を重視。その結果、業績の先行き不安が依然として根強いと考えるのは当然なことだと思います。

一方、日本では業種は違いますが、新日本石油の株価が底堅い値動きを見せています。同社は130日、20093月期に3040億円もの巨額の営業赤字に転落する見通しを示しました。にも拘わらず、同社の株価が堅調なのは、営業赤字の原因が在庫評価損に起因するものだからです。石油会社は70日間の石油在庫を持つことを法律で定められていますので、在庫圧縮を経営施策とすることが難しいことから、多くの投資家は石油在庫に係る評価損益を除いた形で石油会社の営業利益を評価します。そうすると、新日本石油は指標であるドバイ原油について、下期には1バレル当たり80ドルを見込んでいましたが、足元では50ドル前後で推移しているため、それによる在庫評価損を仮に4000億円と見込むと、実質的な営業利益は1040億円の黒字となるのです。

この様に、投資家の目はそう簡単には誤魔化せません。バンカメが20日早朝に好決算を発表し、しかも市場予想を上回っていたにも拘わらず、その発表後に開いた米国株式市場でバンカメ株が急落したのは、投資家の目が節穴ではないことの好例だと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|